日本史探偵団文庫 大坂遷都論 入力者 大山格 |
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| 底本は多田好問編『岩倉公実記』第二冊・皇后宮職刊である。 原本に表題はないため、便宜的に「大坂遷都ノ議」とした。 鳥羽伏見の戦いが終結して間もない時期の新政府による政権構想の一端が垣間見える。 ことに天皇の位置づけについては画期的な内容が含まれる重要史料である。 |
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| 大坂遷都ノ議 今日之如キ大變態開闢以來未曾テ聞カサル所ナリ然ルニ尋常定格ヲ以テ豈是ニ應セラルヘキヤ今一戰官軍之勝利トナリ巨賊東走スト雖巣穴鎮定ニ至ラス各國交際永續ノ法立タス列藩離叛之方向定ラス人心洶々百事紛紜トシテ復古ノ鴻業未其半ニ至ラス纔ニ其端ヲ開キタルモノト云フ可シ然レハ朝廷上ニ於テ一時ノ勝利ヲ恃ミ永久治安ノ思ヲナサレ候テハ則北條之跡ニ足利ヲ生シ前姦去テ後姦來ルノ覆轍ヲ踏マセラレ候ハ必然タル可シ依テ深ク皇圖ヲ注目シ觸視スル所ノ形跡ニ拘ラス廣ク宇内ノ大勢ヲ洞察シ玉ヒ數百年來一塊シタル因循ノ腐臭ヲ一新シ官武ノ別ヲ放棄シ國内同心合體一天ノ主ト申シ奉ルモノハ斯ク迄ニ有リ難キモノ下蒼生トイヘルモノハ斯ク迄頼モシキモノト上下一貫天下萬人感動涕泣致シ候程ノ御實行舉リ候事今日急務ノ最急ナル可シ是迄ノ通主上ト申シ奉ルモノハ玉簾ノ内ニ在シ人間ニ替ラセ玉フ様ニ纔ニ限リタル公卿方ノ外拝シ奉ルコトノ出來ヌ様ナル御サマニテハ民之父母タル天賦ノ御職掌ニハ大ニ乘戻シタル譯ナレハ此御根本道理適當ノ御職掌定リテ初テ内國事務ノ法起ル可シ右ノ根本ヲ推窮シテ大變革セラル可キハ遷都ノ典ヲ舉ケラルニアル可シ如何トナレハ弊習トイヘルモノハ理ニアラスシテ勢ニアリ勢ハ觸視スル所ノ形跡ニ歸ス可シ今其形跡上ノ一二ヲ論センニ主上ノ在ス所ヲ雲上ト云ヒ公卿方ヲ雲上人ト唱ヘ龍顔ハ拝シ難キモノト思ヒ玉體ハ寸地モ踏ミ給ハサルモノト餘リニ推尊シ奉リテ自ラ分外ニ尊大高貴ナルモノゝ様ニ思食サセラレ終ニ上下 |
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| 隔絶シテ其形今日ノ弊習トナリシモノナリ敬上愛下ハ人倫ノ大綱ニシテ論ナキコトナカラ過レハ君道ヲ失ハシメ臣道ヲ失ハシムルノ害ナル可シ仁徳帝之時ヲ天下萬世稱讃シ奉ルハ外ナラス即今外國ニ於テモ帝王從者一二ヲ卒シテ國中ヲ歩キ萬民ヲ撫育スルハ實ニ君道ヲ行フモノト謂フ可シ然レハ更始一新王政復古之今日ニ當リ本朝ノ聖時ニ則ラセ外國ノ美政ヲ壓スルノ大英斷ヲ以テ擧ケ玉フヘキハ遷都ニアルへシ是ヲ一新ノ機會ニシテ易簡軽便ヲ本ニシ數種ノ大弊ヲ抜キ民之父母タル天賦ノ君道ヲ履行セラレ命令一度下リテ天下慄動スル所ノ大基礎ヲ立推及シ給フニアラサレハ皇威ヲ海外ニ輝シ萬國ニ御對立アラセラレ候事叶フ可カラス 一、遷都ノ地ハ浪華ニ如クヘカラス暫ク行在ヲ被定治亂ノ體ヲ一途ニ居へ大ニ爲スコト有ルヘシ外國交際ノ道富國強兵ノ術攻守ノ大權ヲ取リ海陸軍ヲ起ス等ノ事ニ於テ地形適當ナルヘシ尚其局々ノ論アルヘケレハ贅セス 右内國事務ノ大根本ニテ今日寸刻モ置クヘカラサル急務ト奉存候此儀行はれて内政ノ軸立チ百目ノ基本始テ擧ルヘシ若眼前些少ノ故障ヲ顧念シ他日ニ讓リ玉ハヽ行ハルヘキノ機ヲ失シ皇國ノ大事去ルト云フヘシ仰願クハ大活眼ヲ以一斷シテ卒急御施行アランコトヲ千祈萬禱シ奉リ候死罪 正月 大久保一藏 |
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